瞬きの詩人と言われた人がいます。今は亡き、水野源三さん。幼い頃の病気が元で、寝たきりの人生を過ごした彼は、あいうえお表を前にしたお母さんや義理の妹さんに、まばたきで文字の場所を示し、数々の美しい詩を世に送り出しました。最後まで、言葉も話せず、起き上がることも出来なかった彼ですが、その作品を通して多くの人に勇気を与えました。彼の晩年の詩をいくつかご紹介します。

 

「生きる」

神さまの

大きな御手の中で

かたつむりは

かたつむりらしく歩み

蛍草は

蛍草らしく咲き、

雨蛙は

雨蛙らしく鳴き、

 

神様の

大きな御手の中で

私は

私らしく

生きる

 

 

「生かされている」

自分では

何も出来ない私が

家族のやさしさによって

オレンジジュースを飲み

アイスクリームを食べ

詩を作り

み言葉を学ぶ

 

自分では

生きられない私が

神様に

愛され

生かされている

 

 

「朝顔」

今年は

咲かないと

思っていたのに

 

秋風が吹く

窓辺に

朝顔が

ようやく咲かせた

ピンクの花

 

そのひたむきな優しさに

そのひたむきな美しさに

私は心から

神さま

ありがとうございます

 

 

「結婚記念日」

あんずの花が

ほころびる今日は

十六回目の

弟夫婦の結婚記念日

 

父母は逝き

妹たちは嫁ぎ

 

二人の姪と

私の世話をしてくれる

弟夫婦に

神さまの

祝福を祈る

 

 

「涙」

カレーライスを作るために

たまねぎをきざみ

涙流す姪

 

その涙が

悲しみに

変わらないように

もし変わっても

その悲しみに

負けないように

イエスさま支えてください

 

 

「しゃべれない書けない」

私の

まばたきを見て

一字一字拾って

詩を書いてもらう

 

一つの詩を書くのに

十分 二十分 三十分

義妹の愛と忍耐によって

一つ二つ三つの詩が生まれる

 

神さまに

愛されて

生かされている

喜びと感謝を

詩に歌い続ける

 

 

「御恵み」

毎食前に

漢方のゼンソクの薬を

飲みながら

春を待つ私のため

 

スーパーの店先で

義妹が見つけてきた

小さな鉢植えの

クモマ草の花

 

母が死んだら

生きられないと思ったのに

今日は八度目の

母の命日

 

 

「プレゼント」

すばらしいすばらしい

プレゼントはいらない

美しい美しい

カードもいらない

おいしいおいしい

ケーキもいらない

神さまからの

愛のこもった

プレゼントがあるから

 

 

(宗教法人 アシュラムセンター発行 水野源三第四詩集「み国をめざして」より)

 


Christians to remember ヘ戻る     Home